「最近、なんとなく疲れが抜けない」「ちょっとした判断でミスをする」「気分が不安定になりやすい」、こうした「小さな不調」は、体からのサインかもしれません。
私たちが日々積み重ねる 睡眠・食事・運動・ストレス管理・節酒・禁煙 といった生活習慣は、単なる「健康維持」だけではなく、心の安定や、思考力や判断力の土台になります。
心と体のコンディションによって、仕事や生活の質が変わってきますので、生活習慣は「人生の基盤」と言っても良いでしょう。
本記事では、なぜ生活習慣が人生を左右する力を持つのかを、科学的に分かっているエビデンスを交えて解説し、いまからできることを具体的に紹介していきます。
目次
1. 生活習慣は「人生の基盤」
2. 6つの大事な生活習慣とその改善法
3. 睡眠
4. 食事
5. 運動
6. ストレス管理
7. 節酒
8. 禁煙
9. 今日からできる、生活習慣の改善
10. 生活習慣の改善ポイントが分かるシミュレーター
11. あなたの生活習慣改善をサポートする「imakara」
12. まとめ:いまからの行動が未来を変える
記事公開日:2025年10月8日
最終更新日:2025年10月29日
多くの研究によって、「生活習慣の乱れが、高血圧や糖尿病等の生活習慣病リスクを高める」ことが分かっています。近年の研究では生活習慣病だけにとどまらず、がんや認知症との関連も指摘されています。
複数の健康的な生活習慣(適正体重、禁煙、適度運動、バランス食、適度飲酒など)を組み合わせて実践することで、アルツハイマー病リスクを最大 60 % 減少させる可能性が指摘されています。
また、2024年の Lancet Commissionという研究 では、認知症の14のリスク要因のうち、45%が生活習慣(高血圧・肥満・飲酒・喫煙・社会的孤立など)であることが報告されています。
WHO(世界保健機関)も、「定期的な運動」「禁煙」「適正飲酒」「健康的な食事」などを認知症リスク低減策として推奨しています。
こうした疫学的データから、「良い生活習慣の積み重ね」は人生100年時代と言われるこの時代において「長く自分らしく生きる力」につながり、「人生の基盤」であると言うことができます。
ここからは、睡眠・食事・運動・ストレス・節酒・禁煙の6つのテーマそれぞれに対して、「なぜ重要か/どう改善できるか」を具体的に解説します。
質の高い睡眠は、免疫力・記憶の整理・メンタルの安定・ホルモンバランスの調整などに不可欠です。
睡眠が乱れると、慢性的な炎症反応が強まり、心血管・代謝異常を通じて多くの疾患リスクを押し上げる可能性があります
睡眠時間と死亡リスクとの関係をまとめたメタ解析では、短時間睡眠(7時間未満)は死亡リスクを有意に高めるという報告があります
さらに、睡眠の「規則性(定時就寝・起床)」が、寿命の予測因子として大きいとの報告もあります
睡眠障害・不眠状態がある人は、その後うつ症状を発症するリスクが倍になるという研究も知られています
睡眠の質が、心血管・代謝異常や肥満・糖尿病リスクの増加と関連することも分かっています
実は日々の睡眠の積み重ねがその日のコンディションだけではなく、将来の病気・疾病リスクにも関わってくる、ということです。
就寝と起床の時刻を一定にする(変動を小さくする)
スマホ・パソコン等のブルーライトを伴う端末は就寝1時間前にオフにする
就寝前のカフェイン・アルコール摂取を控える。アルコールは入眠効果がありますが、睡眠の質を下げることが知られています。
寝室環境を整える(遮光・遮音・温度・湿度)
日中に適度な運動を入れることで睡眠の深さ・質を高める
就寝前に深呼吸を行うことで、副交感神経を優位にする。息を吸うと交感神経が活発になり、息を吐くと副交感神経が活発になるので、息を吐く時間を多くする。
食事における栄養の質、また、食事によって影響を受ける血糖変動・炎症応答などを通じて、体と脳にさまざまな影響を与えます。
高脂肪・高糖質食や過食・間食習慣は、インスリン抵抗性・脂質異常・肥満を引き起こし、動脈硬化リスクを高め、糖尿病との関連が指摘されています
また、認知機能低下や認知症リスクとの関連を示す研究もあります
一例として、日本の疫学研究で、リボフラビン(ビタミン B2)摂取量が高い群で認知症リスクが最大で約 49 % 低かったという報告もあります
地中海食など、野菜・魚中心+加工食品抑制という食事パターンが認知機能維持に有利との報告も多数あります。
主食・主菜・副菜をそろえて「色とりどりの食材を使う」
間食回数や内容を見直す
就寝2-3時間前の食事は控える
超加工食品(スナック菓子、即席食品、加工肉、菓子パン等)を控える
野菜から食べ始める(食後の血糖値の急激な上昇を抑えることができます)
運動は体と心の両面に作用し、定期的な運動習慣を持つことは、がん・糖尿病・心疾患・脳卒中・うつ病・不眠・早期死亡リスク を下げることが、多数の研究で明らかになっています。
世界保健機関(WHO)は、運動不足を「喫煙・高血圧・高血糖に並ぶ主要な死亡リスク」として位置づけており、定期的な身体活動により全死亡リスクが 20〜30 %減少することを示しています
米国疾病予防管理センター(CDC)は、週150分以上の中強度運動(例:早歩き)を行う人は、心疾患・2型糖尿病・がん(特に結腸がん・乳がん)・抑うつの発症リスクが有意に低いと報告しています。
運動習慣を持つ人はがん全体の死亡リスクが平均 17 %低下するという結果も示されています
近年注目されているのが「運動と脳の関係」です。中高年期の運動習慣を持つ人は、認知症リスクが約20〜60%低下するとの報告があり(Alzheimer’s Society, 2023)、有酸素運動が脳血流の改善や、記憶をつかさどる海馬の神経新生(神経の生まれ変わり)を促すメカニズムが裏づけられています。
精神面でも、運動は抗うつ効果を持ち、軽度から中等度うつ病に対して抗うつ薬と同等の効果をもたらすことが複数のランダム化比較試験で示されています
これらをまとめると、運動は単に「体を鍛える」ためだけの行為ではなく、代謝・血管・免疫・神経・ホルモン・メンタル のすべてに良い影響を与えると言えます。
デスクワーク中心で、1日6〜8時間以上座って仕事をしている方も多いと思いますが、座る時間を1日30分減らすだけでも、心血管リスクを有意に下げることが複数の疫学研究で示されています。
歩く時間をいつもより多くしてみる、少し早歩きにする、など歩く工夫をする
エスカレーターやエレベーターではなく、階段を使う
スクワットなど、家でできる自重の筋トレを習慣に取り入れる
楽しめる身体活動を考えてみる。例えば、子供が小さければ鬼ごっこも運動ですし、学生時代にやっていた運動を再開してみる、というのも良いでしょう
運動後に睡眠・食事・気分がどう変わるかを記録して「体の変化」を自覚する
ストレスの高い状態が長く続くと、交感神経が優位になり、体内では「コルチゾール(ストレスホルモン)」の分泌が過剰になります。
短期間のストレスであれば集中力や瞬発力を高める作用がありますが、慢性的なコルチゾールの上昇は、免疫低下・血糖上昇・筋肉量減少・脂肪蓄積・睡眠障害・うつ症状 などを引き起こすことが知られています
特に、脳への影響は大きく、コルチゾールが高い状態が長く続くと、記憶をつかさどる海馬を萎縮させ、記憶力・集中力等の認知機能に悪影響を与えることが複数の研究で示されています。また、ストレスと睡眠の関係性も高く、コルチゾールが高いまま夜を迎えると、入眠が遅れ、浅い睡眠が増えるという悪循環が起こりやすくなります
ストレス管理とは「ストレスをなくす」ことではなく、自律神経とホルモンのリズムを回復させるためのセルフマネジメントだと考えるのが適切です。深呼吸・軽い運動・自然を感じることなどは、副交感神経を優位にしてコルチゾール分泌を穏やかにする効果が報告されています
ストレスを感じたら、深呼吸を行い、自律神経を調整する。息を吸うと交感神経が活発になり、息を吐くと副交感神経が活発になります
自然の中で過ごしたり、体を動かしたりする時間を意識的にとる。いつもの道でも季節を感じられる道を通るように心がけるだけでも違うでしょう
SNSやニュースから一定時間離れる「デジタルデトックス」の時間を意識的にとる
就寝前は「心拍が上がる活動」を避け、就寝前の少なくとも30分は「リラックスできる静かな時間」を意識する
「少量のアルコールは体に良い」という説は、近年の大規模研究でほぼ否定されています。
世界保健機関(WHO, 2023)は「健康に安全な飲酒量は存在しない(There is no safe amount of alcohol)」と明言しており、わずかな量の飲酒でもがん・心疾患・肝疾患・高血圧・脳卒中などのリスクが上昇することが分かっています
特に、女性はアルコール代謝酵素の活性が男性より低く、同じ量でも肝機能・ホルモン系への影響を受けやすいことが知られています。健康ガイドライン上では、女性は1日平均での純アルコール量10g以下(日本酒1合=約20gの半分)、男性は20g以下(日本酒1合、ビール500ml程度)が「リスクを最小限に抑える目安」とされています
実際の生活の中で「完全にゼロにする」ことが現実的でない方も多いでしょう。重要なことは「飲むか、飲まないか」の二択ではなく、飲酒量と頻度を自分でコントロールする力を身につけることだと言えます。
「少なくとも週2回以上の休肝日」を設ける
飲酒量を減らす代わりに、飲む時は良いお酒を飲み、お酒の楽しみ方を変える
アプリなどを利用して、アルコール摂取量を見える化する
就寝前の飲酒は控えて、睡眠を妨げない
ストレス解消目的ではなく、人との交流・食の楽しみとして飲む
最も健康に良い選択は「お酒を飲まないこと」ですが、お酒を飲む方は「飲む回数や飲み方を意識的にコントロールできる力」こそが重要だと言えるでしょう。「お酒とのより良い付き合い方」は、体と心のコンディションを今以上に整えることにつながると言えるでしょう。
喫煙は、がん・心血管疾患・脳卒中・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・認知症など、全身に悪影響を及ぼすことが分かっています。
世界保健機関(WHO)は「喫煙に安全なレベルは存在しない」と明言し、たとえ1日数本でも早死リスクが50%近く高まると報告しています。
日本人を対象とした大規模研究(JPHC Study)でも、喫煙者は非喫煙者に比べ総死亡リスクが約1.7倍、肺がんリスクが約4倍高いとされ、禁煙後5〜10年でこれらのリスクが大幅に低下することが示されています。さらに、近年は循環器や糖代謝への影響だけでなく、脳への慢性炎症と酸化ストレスの蓄積による認知症発症リスクの上昇も報告されています
また、喫煙は心理的依存や習慣化によって「ストレスを和らげる」と錯覚されがちですが、実際にはニコチン切れによる不安・イライラを一時的に抑えているだけであり、長期的にはストレス反応(コルチゾール分泌)を悪化させることが分かっています
禁煙のメリットはすぐに現れることが分かっています。
禁煙24時間後:血圧・脈拍・血中一酸化炭素濃度が改善
2〜12週後:血流・呼吸機能が向上
1年後:心疾患リスクが半減
10〜15年後:肺がんリスクが非喫煙者とほぼ同等に近づく(WHOデータより)
禁煙は意志だけでなく、「環境」と「仕組み」で成功率が高まります。禁煙外来・ニコチンパッチ・ガム・スマホアプリなどを活用し、「吸わない習慣」を設計することで再発を防げます。
「やめたい理由(健康・家族・未来)」を紙やスマホに明記
禁煙補助薬や外来を利用して初期離脱症状を軽減
吸いたくなった時は、深呼吸をする、水を飲む、歩く、等の別のアクションをやってみる
家や職場で公言して、サポートしてもらう
「すべて一度に改善」を狙うのではなく、「改善のポイント」より出来ることを無理なく始めていくと習慣化しやすいです。例えば、こちらのような内容です。
睡眠:就寝時刻を今より 15 分早める
食事:野菜から食べ始める(ベジタブルファースト)ことで血糖上昇を抑える
運動:駅やお店で、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使う
ストレス管理:ストレスを感じたら、 吐くことを意識して深呼吸をする
飲酒:アルコール摂取量をアプリを使って記録する
禁煙:「やめたい理由」をスマホにメモし、毎日読む
ポイントは「続けられるくらいのレベルで始める」ことです。行動変容理論でも、小さく始めて成功体験を積むことが継続への鍵とされます。
また、ひとつ変えれば、他の習慣に波及する可能性もあります。例えば運動を始めると睡眠質が上がり、ストレス耐性も改善されることが分かっています。
関連記事)Fitbit Charge 6のレビュー:睡眠・運動・ストレス管理で心身のコンディションを高める
ここまでご紹介してきた内容をもとに、こちらのシミュレーターで生活習慣の改善ポイントが分かります。各項目ごとに「現在の状態」と「目標の状態」を選ぶことで、改善ポイントを「行動レシピ」としてお出しします。生活習慣の改善のためのヒントとしてぜひご活用ください。
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生活習慣は、「人生の基盤」と言えます。健康・認知・感情・行動の多くは、毎日の「ちょっとした選択」の積み重ねにあります。
例えば、1日あたり15分早く寝ること、1駅歩くこと、飲酒回数を減らすこと、深呼吸を習慣化すること、こうした小さな行動の積み重ねが、「日々のコンディションの向上」「メンタル安定」「がんリスク抑制」「認知症リスク低下」等々になる可能性は、疫学・神経科学・行動変容研究により裏付けられています。
人生100年時代に「健康」と「お金」の不安は大きいものですが、「健康」と「お金」のコンディションを整えることは人生の選択肢を増やすことにつながります。
関連記事)ライフプランとは? お金の不安をなくし、未来の選択肢を広げる活用方法を解説
まずは 一つの習慣 から変えてみましょう。あなたの「いまから」 が、より良い未来につながります。
“Sleep Health: An Opportunity for Public Health to Address Health” — Annual Review of Public Health
“Improving sleep quality leads to better mental health: A meta-analysis”
“Sleep Duration/Quality With Health Outcomes: An Umbrella Review”
“Imbalanced sleep increases mortality risk by 14–34%: a meta-analysis”
“Sleep regularity is a stronger predictor of mortality risk than sleep duration”
“A systematic review and meta-analysis of prospective cohort studies”
“Targeting 14 lifestyle factors may prevent up to 45% of dementia cases” — Lancet Commission discussion
WHO ガイドライン:認知症リスク低減と生活習慣要因
“Physical activity and the risk of dementia” — Alzheimer’s Association summary
“Small Amounts of Moderate to Vigorous Physical Activity Are Associated With Big Reductions in Dementia Risk”
“Fitness Reduces Dementia Risk, Even in Those at Genetic Risk”
“Midlife cardiovascular fitness and dementia: A 44-year study”
“Smoking harms the brain, raises dementia risk”
“Caerphilly Heart Disease Study — healthy lifestyle behaviors and dementia
“A systematic review and meta-analysis to assess the relationship between sleep duration/quality, mental toughness and resilience”
“A systematic review of sleep interventions on presenteeism
“Sleep is essential to health – Journal of Clinical Sleep Medicine”
“Association between sleep disturbance and mental health: Meta-analysis”
“A systematic review of the effect of sleep interventions on presenteeism”
“A systematic review and meta-analysis of physical activity / sedentary / sleep compositional studies”
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